≪1番≫大切なこと①
「1番」大切なものってなんだろう?
ちょうど20才の冬、僕に門が開かれた。
「天」から開かれた門だった。
それはすぐに「歓門」になった。
しかし、心の甘さから、ほどなく「慢門」となった。
そしてそれはゆっくりと「堕門」になった。
それでも僕は全てを手に入れたつもりでいた。
やがて門は奈落の底に通じた。
そこで僕は「蝿の王」と出会った。
「蝿」は、個人では「嘆き」で、集団では「狂気」だった。
彼らの存在は衝撃だった。
僕は彼らを救おうとした。
しかし、僕の方が蝿になってしまった。
僕は、逃げ出した。
蝿なのに蝿から逃げて、
自分を守るために自分から逃げた。
僕は、「門」の扉を自ら閉じた。
しかし、もう遅かった。
僕の心には「嘆き」だけが残った。
「門」は、パンドラの匣だった。
僕はその門に、深く深く封を施した。
そして探した。
門の向こうに置いてきた自分を救う術を。
他の蝿を「自分」と呼ぶ僕は、もはやただの蝿でなく、「蠅の王子」とでもいうべき蝿だった。
ただ、僕は一人で逃げてきたので、蝿界No2の「嘆き」を抱えながらも、孤独だったので「狂気」を帯びることはなかった。
すべてが灰色で見えるような世界で、僕は探した。
探した。
探した。
初めは「希望」を探してた。
そして、それはすぐに見つかった。
しかし、彼の心は素晴らしいと思うが、彼の教えを学ぶほど、僕は窮屈になった。
そして気づいた。
「希望」とは、星々だったと。
夜空に光る星たちのことを、希望というのだと。
しかし、「希望」くらいの光では自分は救えなかった。
そしてすぐに「太陽」を探そうとした。
しかし、それでもダメだと気づいた。
太陽はいずれ沈むのだ。
僕は「源」を探した。
僕はこのとき、ようやく自分が探していたものがそれだったのだと気づいた。
そして、僕は、それに「1番大切なこと」と名付けた。
このとき、すでに5、6年はゆうに費やしていた。
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